Home > 従軍慰安婦問題 > 従軍慰安婦問題2   日鮮同祖論 

従軍慰安婦問題2   日鮮同祖論 

えてして従軍慰安婦問題は河野談話から始められるため、韓国併合の歴史背景は視野の外に置かれたままです。膨張国家大日本帝国が領有し統治した台湾総督府、朝鮮総督府、満州国にアヘン専売制度を設置したことについては一言も触れられていません。ネトウヨの動画は判で押したような韓国の誹謗中傷に終始しています。まずは韓国併合前夜の大日本帝国の世論操作から見ていきましょう。



小熊英二『単一民族神話の起源 <日本人>の自画像の系譜』新潮社より以下抜粋


こんにちでは忘れられがちなことだが、一八九五年に台湾を、一九一〇年に朝鮮を併合していらい、総人口の三割におよぶ非日系人が臣民としてこの帝国に包含されていた。戦時中の「進め一億火の玉」という名高いスローガンにうたわれた「一億」とは、朝鮮や台湾を含めた帝国の総人口であり、当時のいわゆる内地人口は七千万ほどにすぎない。


「日本人」は、いったいいつから、自分たちを単一で均質な民族として描きだしたのだろうか。それはどのような状況のもとで、どのような動機でなされたのだろうか。こうした研究は、日本の歴史を知るうえで重要なばかりでなく、民族の純血種や均質な国民国家への志向、異民族への差別や排斥といった、現代の国際社会の大きな問題にも通ずることはいうまでもない。


さらにふみこんでいえば、本書が主題とするのは、民族論というかたちをとってあらわれた、「日本人」と称する人びとのアイデンテイテイ意識の系譜である。ある人びとが自分たちをひとつの民族と考えたとき、彼らがどんな自画像を描いてゆくか。そしてそれは、彼らがおかれた状況によってどのように変化してゆくか、これは必ずしも「日本人」のみに限られた問題ではない。



「日本人」と朝鮮人の祖先は同じであるとする、「日朝同祖論」。これは、こんにちの近代史において、大日本帝国の侵略を正当化した思想のなかでも、もっともいまわしいものの一つとされている。



列島(引用者注 日本列島)の住人が朝鮮半島からやってきたものの子孫だとする説は、江戸時代からあった。たとえば新井白石は、「我国の先は馬韓に出し事」の可能性を検討し、熊襲と高句麗は同族ではないかと考えたらしい。


また一七八一年、藤貞幹という儒学者は、記紀神話のスサノオはもとは辰韓の主であり、神武天皇は中国の呉の太伯の末裔だと主張した。藤によれば、神武の時代は列島の言語や風俗は朝鮮風のままだったが、神武天皇の系統は断絶し、応神天皇以降は別系統だという。当時の国学者たちはこれに激怒し、本居宣長は藤の説を「狂人の言」と決めつけている。


こうした漢学者と国学者の対立をうけつぐかたちで、明治期には、国学と対抗する近代的歴史学のなかから、半島と列島の民族的共通性を説くものがあらわれた。近代歴史学の文脈にのっとった日鮮同祖論としては、一八九〇年前後の、星野恒や久米邦武のものが源流としてあげられよう。


さて、彼らは記紀の分析などから、どのような古代史観をひきだしたか。星野が一八九〇年に書いた「本邦ノ人種言語ニ付鄙考ヲ述テ世ノ真心愛国者ニ質ス」(引用者注 日本の人種や言語について卑見を述べて、熱烈なナショナリストに問いただす)という風がわりな題名の論文のそれをみてみよう。この論文は、通常なら連載にまわされるほどの分量だったのを、部分的に読まれて反発を買うことをおそれ一挙掲載になったという、いわく付きのものであった。


ここで星野は、当時としては衝撃的だっただろう主張をする。彼によれば、天皇家の祖先すなわち「皇祖ハモト新羅ノ王」であり、彼らは朝鮮半島から「本州ヲ発見シ」て渡来してきたのであった。


星野によれば、半島から渡来した「皇祖」たちは、まず現在の島根にあたる「出雲地方」に繁栄を築き、ついで近畿にあたる大和地方にその勢力を広げた。その後、この一族は神武東征などを通じて列島の先住民を征服し、太陽の神に擬されたアマテラスのもとに平和な王国を築いた。そしてスサノオは新羅の主であり、この後も列島と半島を往復していた。つまり、列島に陣取った「皇祖」一族のもとで列島と半島は統一され、古代では「日韓ノ人種言語同一」「二国ハモト一族ニシテ他境ニ非ス」であったのだ。


ところが、この列島・半島統一王国は、長くはつづかなかった。アマテラスとスサノオが仲たがいをしたのである。半島側が列島に対して離反し、列島先住民である熊襲を支援して反乱をおこさせたのだ。そのため、神功皇后による半島侵攻と熊襲鎮圧が行われた。


「是ヨリ日韓復タ一国ト為リ」はしたが、やがて再び新羅が離反し、唐と連合して白村江の戦いで日本と百済の連合軍を破り、天智天皇の代にしてついに半島を失うにいたる。その後、「桓武天皇ノ御代ニ日本ハ三韓ト同種ナリト記載セシ古書ハ焼棄セラレ・・・・太古皇祖ノ新羅ニ主タル事実」は抹消され忘れさられてしまったという。


星野の意図は明白である。列島と半島はもと一国で、言語的にも人種的にも同一であり、天皇家は半島の支配者だった。ならば、ふたたび半島を天皇家の領土にくみいれることは当然だというのである。


日鮮同祖論は、けっして国体論者や神がかりの人間からでてきたのではなく、それと対抗する側から出現したのである。帝国が日清・日露戦争に勝利し、しだいに自信を深めてゆくなかで、日鮮同祖論から帝国膨張に有利な部分だけがクローズアップされてくることは、必然であった。


日本語と朝鮮語の同一性を説く潮流は、日韓併合直前に出された金沢庄三郎『日韓両国語同系論』で決定的となった。この本の序説の書き出しが、その結論を語って余りある。「韓国の言語は、我が大日本帝国の言語と同一系統に属せるものにて、わが国語の一分派たるに過ぎざること、恰(あたか)も琉球方言のわが国語におけると同種の関係にあるものとす。」


金沢によれば、日本語と朝鮮語は、ドイツ語とオランダ語、フランス語とスペイン語のような関係にある。彼は、記紀を読めば両国の交渉が頻繁で言語の不通がなかったことは自明であるといい、「日韓の一城」と「皇祖」の半島支配を立証した「星野恒先生」の学説も引用している。この金沢学説は国際的に広まり、当時の事実上の学問的定説となるにいたった。


さらに日鮮同祖論者の例としてあげられるのが、自由民権の政治家として知られた大隈重信である。大隈の一九〇六年の朝鮮政府論によれば、「韓国は・・・日本より文明の程度が高かったので、其の文明を日本に移したことがある、建築家も、宗教家も、学者も、皆な韓国から聘して来たのであり、奈良の法隆寺の建築は韓国式で、韓国の人を雇ってやった」のだった。


だが大隈によれば、現在の朝鮮は没落している。それは、「韓人其者の天性ではない、政治が悪い」という。なぜなら、彼らの「先祖は我々と同じ」であり、「骨相学の上から云っても、韓人は日本人と同一である」。明治維新以前の日本は封建的制度のもとで発達がとまっていたが、「一たび封建が破れて自由の政治の下に支配せらるるや否や一大発展をした」。だから、「政治さえ善くなれば、韓人は日本人同等に発展すべき運命を有って居る」というのである。


ここには、大隈の開明的部分と、海外侵略がどう論理的に整合していたかがうかがえる。朝鮮は「人種」のうえでは日本と同じであり、日本の手で「自由の政治の下に支配」して導いてやれば文明開化の道をたどれるはずだ、というわけだ。そして大隈によれば、「どうしても日本人の方が、智恵もあり経験もあり富の力もあるから・・・朝鮮人はどうしても日本人の手下になって働かなければならぬ」「日本人が地主となり、資本家となり、朝鮮人は番頭、手代、売子で、製造ならば労働者、土地ならば小作人と云ふやうな工合になるであらうと思ふ」という。


一九一〇年八月の日韓併合にあたり、多くの新聞・雑誌で混合民族論者たちは、これまで蓄積されてきた論理を用いて併合を賛美した。日本と朝鮮の歴史や人種論に言及して併合を賛美したもののうち、ほとんどすべては日鮮同祖論ないし混合民族論の範疇に入るものであり、純血論を説いたものは主要新聞・雑誌には存在しなかった。



大坂朝日新聞では、八月二四日の井上密の談話が、神功皇后の歴史を強調した。八月二六日の「天声人語」は、「日本人」には「随分朝鮮人の子孫が多い」といい、「朝鮮人を先天的に劣等視するのは日本人自ら侮辱するもの」として日本人の手で政治を改善すれば朝鮮人は進歩すると主張している。


また八月二七日の「天声人語」は、こう述べている。「▲日本民種が世界の雑種なることは人種学者の一致する処だ、日本民族の誇りは多くの人種の長所を採った点に存するのである ▲と言って朝鮮人には日本人の採るべき長所がないが、神話を同うし、語系を同うし、人種を同うする彼等には、立派な日本人となるべき潜在的能力を有ってゐると看做(みな)して差支(さしつかえ)がない」


また八月二九日の「天声人語」は、朝鮮人の名は「日本流に改名するが宜い」と主張した。同日の社説「日韓併合は自然なり」は、両者の近縁は「歴史上人類学上言語学上より見て確なり」で、歴史的に九州は「本土」より朝鮮に関係が深く、神功皇后がいなければ韓国の領土になっただろうと述べている。


八月三一日には大隈重信の談話が、「人種の同一」と渡来人同化の歴史から、同化の容易を説いた。さらに同紙は、八月二九日から九月四日にかけて増刊の朝鮮号を発行した。八月二九日号では「保護前の朝鮮」が、スサノオや仁徳天皇、神功皇后などが朝鮮植民に尽力したとしている。八月三一日号では大隈が「征韓論の下(賜)」で、同日の本誌談話と同趣旨の同化容易論をくりかえした。


一日号から四日号では、東洋史家の内藤湖南が「朝鮮の将来」を掲載し、朝鮮系渡来人が新撰姓氏録で貴族待遇をうけていることをあげ、「将来の朝鮮人も同化の方法さえ良かったならば、千万人くらいのものは五千万の日本人のあいだに入って段々日本人の恩恵によって良くなって行くと云っても差支ない」と述べた。彼によれば、朝鮮は「支那なり日本なりが六七百年若しくは千五六百年も前の状態を現在に保持して居る国」であった。


東京日日新聞では、八月二七日に次章で検討する喜田貞吉の談話「異種族同化先例」を掲載した。これは渡来人や「隼人蝦夷(はやとえぞ)」などをあげ「天孫種族が巧にあらゆる他の種族を同化融合」したことを賞賛し、「人類学者が日本人を以て雑種なりと称す」ことを掲げたものであった。三〇日には吉田東伍が「地理上の半島と本島」で、日本と朝鮮は「全く同一の種族」とした。同日の大隈重信「隈伯の併合観」も、同種を強調している。


三一日には法学者の戸水寛人が「同化主義を採れ」で、同種同語論から同化の容易を説いた。同日久米邦武が「合併にあらず復古なり」で、「任那日本政府」の存在をも強調しつつ、併合派両者が一国だった時代にもどったにすぎないとした。九月一日の社説「朝鮮人の教育」は、古代の列島には「韓人の帰化」や「亜細亜大陸の国民の移住」がきわめて多く、「是等の異種民族は皆悉く国民的一大溶炉の中に陶鋳」されたとし、この「祖先よりの遺伝たる国民的同化力」を朝鮮で試せとよびかけている。


また読売新聞は、八月二五日に大隈が「朝鮮人を歓迎せよ」で、「古くは日本へ文明を輸入したのも朝鮮である」とし、「新日本人たる朝鮮人」の歓迎を主張した。二六・二七日には金沢が「朝鮮教育根本問題」で言語の同系論を書いている。二七日の荻野由之「韓国帰化人の歴史」は、神功皇后、坂上田村麿、兼務天皇の皇后などが渡来人系であると述べ、「日本人は韓人の血統をひいて居る・・・韓人の血統もある」として、古代の「一視同仁」を強調した。


二一日には歴史学者の内田銀蔵が「韓国とは何ぞや」で朝鮮、中国からの渡来人の多さを説いている。三一日には法学者の山田良三が「朝鮮の啓発同化」で、大量の渡来人が「忠良なる日本臣民」となって「我国民は漸次帰化人の血液を混ずるに至れり」と述べ、「多数帰化人を同化」した経験を併合にいかせとした。


東京毎日新聞では、八月二五日に言語学者の金田一京助が「言語学上の日韓同系」で、「人類学者は日本民族の初祖は韓地より来れりという学説に一致す」としたうえで言語同系論を説き、併合は復古であると結論した。二六日には坪井が「日本人種の成立と朝鮮人」で、「日本人種」はアイヌ系・マレー系・大陸系の混合だとしたうえ、その三要素のうちアイヌとマレー系台湾先住民族が帝国に編入されていたところへ、のこる大陸系の朝鮮が併合されたことを歓迎し、三者が「大鍋に入れられるに至った様なもので有る」と形容している。二七・二八日には金沢が「合併後はいかに日本語を普及せしむべきか」で言語同系論を説いた。


万朝報は、八月二五・二六日の「朝鮮の過去」という無署名記事で、新羅王子である「天日槍の血を承けたまへる神功皇后」の朝鮮侵攻を称えた。九月一日の社説「同人種の和合」は、古代にには朝鮮人の列島移住がさかんであり、「今日の大和民族が大半朝鮮人より成るは疑い無き事実なり」として、「今此同一人種が併合に依りて、一国民となる」ことを歓迎している。


このなかには、ほんらいは日鮮同祖論と混合民族の要素だった天皇家外来説は一つもない。この点は、タブーだったとみてよかろう。だが、日本が純血を保ちつつ一方的に半島に進出したと主張する論調も、ほとんどみあたらない。


以上の新聞には、日本の人類学・歴史学・言語学などの中心人物たちが登場した。そのほとんどが、併合を歓迎するなかで混合民族論と日鮮同祖論に与していたことがわかる。象徴的だったのは『歴史地理』が一一月に出した『朝鮮号』という臨時増刊で、ここでは星野恒、久米邦武、吉田東伍、喜田貞吉、坪井正五郎、金沢庄三郎などが顔をそろえ、併合を歓迎している。


(続く)
コメント

コメントを受けつけておりません。

ブログ内検索

RSS・ブックマーク

最新記事

(04/02)
(03/01)
(02/19)
(02/01)
(01/26)
(01/01)
(12/22)
(12/01)
(11/23)
(11/18)

最新コメント

[02/27 ペリマリ]
[02/27 ペリマリ]
[02/26 ペリマリ]
[02/26 ペリマリ]
[02/16 ペリマリ]
[01/20 ペリマリ]
[01/17 クールCyrusII]
[11/20 ペリマリ]
[11/13 ペリマリ]
[11/13 ペリマリ]
[11/12 jdwsr736]
[09/05 ペリマリ]
[03/16 ペリマリ]
[03/15 NONAME]